法楽日記

デジタル散策記&マインド探訪記

楠田悦子(編著)「「移動貧困社会」からの脱却」

楠田悦子(編著)「「移動貧困社会」からの脱却」を読みました。

執筆者は、高齢者事故からモビリティを考える会のメンバー5名だそうです。


(1)背景

現代社会は、公共交通機関や自動車などの高速移動手段の存在を前提として発展してきました。大都市圏では、駅周辺は商業地やビジネス街として賑わっています。地方都市では、自動車ですぐに移動できる範囲に商業施設や公共施設が点在しています。

そのため、高齢化や病気や怪我などでそれぞれの地域に必須の移動手段の利用ができなくなってしまうと、社会生活を営むことが難しくなってしまいます。高齢化社会を支えるためには、大都市圏においては公共交通機関や公共道路のバリアフリー化はこれからますます重要になってくるでしょうし、地方都市や農林漁村においては自動車に代わる個人の移動手段がこれからますます重要になってくることと思います。また、地域によらず、駅やバス停までの個人の移動手段がこれから大きな課題となってくるのではないかと思います。

自動車の自動運転技術に期待する声が時々聞かれますが、安全性の高い自動運転大衆車が気軽に利用できるようになるのは、まだまだ先のことではないかと思います。

このような状況を踏まえて、各地の自治体や事業者は人々の移動手段について知恵を絞り、様々な取り組みがなされてきました。私もこれからの個人の移動手段について興味があるので、関連分野の本を少しずつ読んでいます。

この本では、高齢化社会における個人の移動について、人・道路・移動手段の3つの視点から書かれていました。前半は現状について、後半は未来への取り組みについてでした。興味深く拝読しました。


(2)代替移動手段

この本の後半で、自動車に代わる個人の移動手段が紹介されてました。取り上げられていたのは、自転車(含:電動)、ミニカー(例:トヨタ・コムス)、原付(含:電動)、キックボード、シニアカー、車椅子(含:電動、多機能、牽引付き)、ゴルフカート、などなどで、電動がメインでした。

この中で私が面白いと思ったのは、グラフィット社和歌山市)の電動自転車です。道路交通法上は、原付にもなり、自転車にもなるようです(ただし切り替え作業が必要です、電動アシスト自転車モードはないようです)。小型軽量で、折り畳めて、原付程度の価格に収まるようにデザインされてます。同社は電動スクーターも販売予定とのことです。

もうひとつ面白いと思ったのは、電動車椅子Whill(ウィル) です。道路交通法上は歩行者と同じ扱いになるそうです(時速6kmまで)。写真を見ると横幅が自転車程度のようなので、歩道があまり広くないところでも通りやすそうです。段差が5cmあっても大丈夫だそうです。車椅子なので、公共交通機関にそのまま乗ったり、商業施設や公共施設にもそのまま入ったりできるところが多いのではないかと思います。そのため、移動可能範囲が広がりやすいのではないかと思います。

どちらも機能性とおしゃれ感を兼ね備えているところがよいなと思いました。またどちらも、自宅から駅やバス停までの移動にも、移動先の駅やバス停から目的地までの移動にも使えそうなので、足腰の弱った人たちの行動範囲が随分と広がるのではないかと思います。


(3)デジタル技術

デジタル技術を利用して、移動の必要性を減らす試みについても書かれてました。例として、オンライン会議、オンライン授業、オンライン診療が紹介されてました。

オンラインでできることが増えると、公共交通機関はますます苦境に立たされるかもしれないので、個人の移動手段がますます重要になるかもしれません。


(4)万能感と危機察知能力

私は後遺症のため脳の一部機能が壊れています。そして回転力も随分と低くなっています。

そのためクルマを運転するときは、ゆっくりめの速度で走っています。周囲の状況を確実に把握するためでもあり、また、咄嗟の対応を確実にするためでもあります。

ところが、頭脳作業の後など脳が疲労しているときは、クルマの流れに合わせて、ついつい速めに走りたくなってしまいます。おそらく、危険を察知する能力が落ちて、偽りの万能感を感じてしまうからではないかと思います。そこで、万能感を感じるときはいつも以上に注意して、いつも以上にゆっくり走ることにしています。

ところで、MS&ADインターリスク総研株式会社の調査によると、自動車の運転に対する自信は、年代が高くなるにつれて非常に高くなるそうです(p.23で紹介されてました)。これは私の想像ですが、ひょっとしたら加齢とともに危険察知能力が少しずつ落ちていって、ある時期から万能感が急に高まってしまうのかもしれません。

自動車運転への自信が過剰に高まったときが、自動車の運転をやめるべきときかもしれません。私は人様よりも早めにその時期が来る可能性が高いので、心したいと思います。