法楽日記

デジタル散策記&マインド探訪記

怒りの感情の原因(その1)

(1)怒りの感情

一番最初に取り組んだのは、怒りの感情の原因でした。

怒りの感情には、ちょっとしたイライラから我を忘れた激しい怒りまで、時と場合と相手によって様々なバリエーションがあります。また、怒りの感情には大概、理由が伴っています。「あいつが××したから腹が立った」「あいつが△△しているところを見ると無性に腹が立つ」などなど。

そこで一般には、悪い行為を見たり聞いたりした結果として怒りの感情が沸き起こってくるのだと考えられているように思います。また、怒りの感情の激しさは、行為者の悪徳ぶりや自分たちの正当性を示しているものと考えられているようにも思います。


(2)本当の原因

私もかつてはそのように考えていました。

しかし考えてみると、同じ行為を赤ちゃんがしても滅多に腹が立ちません。また、同じ行為でも誰がするかよって腹の立ち方が全然違います。怒りの感情の原因は、行為の善悪正邪とは別のところにある可能性を示唆しているように思います。

そこで、怒りの感情が発生した状況をいろいろと思い出して、理由ごとに分類してみました。ところがどんなに工夫して分類しても、「××なときに腹が立って、○○なときは腹が立たない」となるようなスッキリした分類ができません。

あるとき視点を変えて、どのような状況で怒りの感情が発生したかを分類してみました。すると、なんとなくスッキリと分類できました。さらによくよく状況を吟味しているうちに気がつきました。どうやら、怒りの感情が発生するのは、相手の中に自分の嫌いなところを見たとき(あるいは連想したとき)なのでした。怒りの感情の理由だと信じていたことは、本当の原因ではありませんでした。


(3)怒りの感情の発生過程

今では次のように考えています。

  1. 五感から入ってくる情報は、まずは潜在意識のどこかで処理されます。その際、誰かの行為の中に自分の嫌いなところを見ると(あるいは連想してしまうと)、潜在意識のどこかで不快な感情が発生します。これが怒りの感情の元です。

  2. その感情が潜在意識から顕在意識に向けて上がっていく過程で、怒りの感情の本当の原因は忘れられて、代わりに別の理由が付加されます。おそらく、自分の中の嫌いなところを直視したくないからだと思います。多くの場合、怒りの感情が発生した際にちょうど見聞きしていた行為を、道徳的に悪いものと脚色した内容になっています。

  3. その感情が顕在意識に届く頃には、「あいつが××したから腹が立った」のような、自分が受け入れやすいストーリーになっています。顕在意識はそれを鵜呑みにします。

このような発生過程をたどるので、潜在意識のどこかで怒りの感情が発生した際の本当の原因と、顕在意識に届けられた怒りの感情の理由は、まったくの別物となっています。


(4)怒りの感情はセンサー

したがって、怒りの感情を小さくしたり無くしていったりするために必要なのは、自分の中の嫌いなところをなくしていくことだと思っています。言い換えると、自分のことを無条件に好きになることだと思います。

もちろんこれは簡単なことではありません。その理由のひとつは、自分の中の嫌いなところは直視したくないので、自分の中のどこが嫌いなのか自分では認識しにくいことにあるのではないかと思います。

そこで視点を変えて、自分の中の嫌いなところを見つけるためのセンサーとして、怒りの感情を活用するのがよいのではないかと思います。これまでに怒りの感情が発生した状況を思い出して、共通項を見つけていくと意外と見つかるかもしれません。あるいは、怒りの感情が発生したときに、怒りの感情に溺れることなく冷静になってその感情を眺めてみると、自分の中の嫌いなところを見つけることができるかもしれません。


(5)自分の中の嫌いなところを冷静に認識すると…

自分の中に嫌いなところがあるのは、おそらく心の傷が原因です。傷を癒せば消えていきます。そのためのひとつの手が、「私は自分の中の○○が嫌いなんだ」と冷静に認識することです。そして怒りの感情が湧き上がるたびに、再認識することです。そうやって見つめているうちに、不思議なことにやがて消えていきます。

自分の中の嫌いなところはひとつではありません。ひょっとしたら星の数ほどあるかもしれません。しかし、大きなものからひとつひとつ見つけては消していくうちに、怒りの感情の発生頻度がだんだんと下がっていき、発生強度もだんだんと下がっていきます。

怒りの感情が発生すると思考の轍(わだち)に入っていきがちですが、怒りの感情が発生しなくなると冷静に柔軟に思考することができるようになります。生きていく上で、これはとても重要なことではないかと思います。


(6)おわりに

怒りの感情の原因は自分の中にあります。仮に他人の言動を変えることができたとしても、自分の怒りの感情の発生を止めることはできません。自分を変えることでしか、怒りの感情の発生を減らしたり弱めたりすることはできません。

このことを発見した当時は、前述の内容こそが怒りの感情の唯一の原因だと思ってました。しかしその後、もうひとつの怒りの感情の原因を発見することになります。ふたつめの理由については、また改めて…