介護施設というと、スタッフが決めた時間割に沿って、お風呂に入ったり、お遊戯したり、食事をしたり、リハビリを受けたり、診察を受けたり、という印象がありました。そしてスタッフは時間割通りに一所懸命にお世話をして、利用者は受け身というイメージがありました。
ところが「あおいけあ」はまったく逆で、利用者自身が自分たちでお料理したり、お掃除したり、洗濯したり、お茶を入れたり、庭の手入れをしたり、畑作業をしたりするそうです。スタッフは見守るだけです。自立支援が目的ですから、言われてみると確かに、それこそが本来の姿だと思います。
実際には、そのような状態にもって行くまでが大変なようです。利用開始時点では、起き上がるのも歩くのも大変な状態だった人を、少しずつリハビリして自力で動けるようにするそうです。あるいは、認知症で徘徊癖のある人の心を少しずつほぐして、徘徊癖をなくしていくそうです。そのため施設に鍵をかける必要がないそうです。
そして、できないことではなく、できることに目を向けるのだそうです。介護施設利用者の世代では、女性は家事が得意な人が多いのでやってもらう。男性もそれぞれ得意なことをやってもらう。体が覚えていることなら、認知症でも、動きに難がある人でも、簡単にできちゃうようです。そうやって、たくさんの人の役に立つことが、機能回復の大きな動機となるようです。利用者一人一人が何ができるかを見極めたり、安全な作業環境を整備したりすることが、スタッフの重要なお仕事のようです。
また、近隣の人たちが自由に出入りできるように工夫しているそうです。近所付き合いも大切にしているそうです。そのため、普段から介護施設に子どもたちが遊びに来るそうです。大人も遊びに来るそうです。大人と言っても、介護施設の利用者から見れば子ども世代、孫世代でしょうから、近所の人たちとの交流は、介護施設に通う楽しみのひとつになっているのではないかと思います。
スタッフの役割は、喩えるならオーケストラの指揮者かもしれません。一緒に楽しんでいるようでいて、実際にはどうすれば利用者が心から楽しんでくれるか、どうすれば自然と機能の維持・回復につながってくれるか、頭をフル回転させながら考えているのではないかと思います。
下記の漫画は、実話を元にした作品です。登場人物は架空の人たちで、実際とは異なる経歴で描かれています。
- 漫画『あおいけあ物語』 (みんなの介護求人)
元になったのは下記の書籍です。
- 森田洋之(著),加藤忠相(著)「あおいけあ流 介護の世界」 (南日本ヘルスリサーチラボ, 2016-08-31)
また、「あおいけあ」と代表の加藤忠相(かとう・ただすけ)さんは国内外から大きな注目を集めているそうです。
下記は紹介映画です。
- 映画『僕とケアニンとおばあちゃんたちと。』 (70分, 2019年)
以下は紹介記事の一部です。
- あおいけあ流マネジメント〜世界が注目するケアの裏側にある一人ひとりがリーダーシップを発揮する組織づくりとは〜 (KAIGO LEADERS, 2019-05-29)
- SpecialInterview 加藤 忠相(かとう ただすけ)さん (出雲市介護職魅力発信プロジェクト『LIVE!』, 2019年12月)
上述の書籍『あおいけあ流 介護の世界』では、サービス付き高齢者向け住宅『銀木犀』の取り組みも紹介されてました。