法楽日記

デジタル散策記&マインド探訪記

川嶋佑(著)「内発動」

川嶋佑(著)「内発動」を読みました。

タイトルの『内発動』は、著者が見出した身体操作方法の名前だそうです。一般的な身体操作方法(『外発動』)では「四肢の筋肉が先に動く」のに対して、著者が提唱する『内発動』では「肩甲骨、股関節、体幹部が先に、主導的に動き、四肢の筋肉は受動的に動く」そうです(p.39)。

また、著者は『相対軸運動』も提唱しています。一般的な身体操作方法(『中心軸運動』)は自分自身の重心線を中心とした動きであるのに対して、著者が提唱する『相対軸運動』では瞬間的もしくは持続的に重心線を相手に持っていくそうです(p.20)。

この本は、前半では神技にも見える超一流選手の動きを『相対軸』と『内発動』の観点から解説し、後半では『内発動』を身に付けるためのストレッチとトレーニング方法を紹介しています。


前半の解説では、身体の動きを『相対軸』と『内発動』の視点からの解説する前に、より原理的な物理学(力学)の視点から解説しています。

例えば、しゃがんだ状態から立ち上がる動作を考えてみます。私のような素人から見ると、この動作で必要なのは下半身の筋肉だけで、上半身の筋肉は姿勢制御に使われるのみではないかと思ってしまいます。

ところがこの本によると、上半身の筋肉も立ち上がる動作に寄与できるそうです。

例えば、立ち上がる前に頭部を前方に垂らしておいて、立ち上がる瞬間に首から背中にかけての筋肉を使って急速に持ち上げるとします。人間の頭部は体重の約1割の質量があるそうなので、それだけの重りを急激に振り上げと、重りに釣られて身体を多少上昇させることができるそうです。これを力学的に見ると、頭部の急速な振り上げによって「質点の運動エネルギー(2分1 × m × vの2乗)」が発生し、それを「重力による位置エネルギー(m × g × h)」に変換することで、身体の上昇運動を補助することができる、となります。

同様に、立ち上がる前に両腕を垂らしておいて、立ち上がる瞬間に肩甲骨付近の筋肉を使って両腕を急速に持ち上げるとします。人間の両腕を合わせると体重の約1割の質量があるようなので、それだけの重りを急激に振り上げることに相当します。頭を振り上げたときと同様の仕組みで、身体の上昇運動を補助することができるそうです。

このように、上半身の筋肉を使って上向きの運動エネルギーを生み出すことで、立ち上がる動作を補助することができるそうです。

それ以外の動きでも、身体の動きを力学的に捉えることで、より効率的な身体操作方法の原理が見えてくるようです。運動エネルギーを位置エネルギーに変換して利用するだけでなく、逆に位置エネルギーを運動エネルギーに変換して利用することもできます。回転運動が持つ運動エネルギーも利用できます。重りとなりうるのは、頭部、四肢、内臓、全身など様々です。支えとなりうるのは、地面、相手など様々です。重心を移動しない動きは楽に素早くできます。全身を固めたり緩めたりすることで接触時の質量や重心を変化させることができます。


力学的に見て効率的・効果的な動きを、現実の肉体で実現するために重要となるのが、『相対軸』と『内発動』のようです。この本では、『相対軸』と『内発動』とは何か、どのように使えばよいか、どんなトレーニングを積めばよいかが解説されていました。動画等が「川嶋佑の公式サイト」に掲載されていました。