法楽日記

デジタル散策記&マインド探訪記

山極寿一(著)「ゴリラからの警告『人間社会、ここがおかしい』」

山極寿一(著)「ゴリラからの警告『人間社会、ここがおかしい』」を読みました。出版社によると「京大総長にしてゴリラ研究の第一人者である著者が、霊長類の視点から現代日本の問題点をあぶり出し、その解決策を提案する一冊」とのことです。毎日新聞の連載コラム「時代の風」より、平成24年(2012年)4月から平成28年(2016年)3月までの記事を元に加筆・修正して作られた本だそうです。

以下、興味深かった記述をいくつか紹介します。

著者はゴリラの子どもと人間の子どもがジャングルで出会う絵本を作ったことがあるそうです(p.78)(もしかしたら「ゴリラとあかいぼうし」でしょうか…)。絵本作りの際に聞かれたのかどうかはわかりませんが、絵本には書いてはいけないことがあるそうです。子どもに食べ物を与えてくれる人を決して死なせてはいけないのだそうです。子どもにとって、食べ物を与えてくれる人は世界を与えてくれる存在であり、神聖で侵すべからざる存在だからのようです(p.83)。

NHKの『すイエんサー』という番組で、中高生中心のすイエんサーガールズと京都大学理学部の学生が対決したことがあるそうです(p.106)。平成25年(2013年)1月に放送された「京都大学からの挑戦状!」のことかもしれません。与えられた課題は、「A4用紙1枚とハサミを使って何かを作り、5mの高さから落として時間のかかった方が勝ち」だったそうです。結果は中高生チームの完勝だったそうです。頭を使うクセが心身に染み込んでいると、どんな時でもついつい頭に頼ってしまって凝りに凝った回答を探そうとするのかもしれません…。そして、失敗を恐れず頭を使い続けているうちに、だんだんと大成していって偉大な成果を出せるようになるのかもしれません。あるいは成果を出せないまま一生を終える人もいるかもしれません。シンプルさも大事だと思う一方で、失敗を恐れない姿勢、人生を棒に振ることを恐れない姿勢も大事だと思いました。

争いについてのコラムの中で「日本が武力を強めていく将来に、私は強く異を唱えたい」という記述がありました(p.165)。京都大学総長の発言として、とても心強く、また頼もしく思いました。

多動物共生時代についてのコラムの中で芥川龍之介の短編「桃太郎」が紹介されてました(p.186)。とても興味深い短編小説だと思いました。また、「人間と動物との関係について認識を変える方法がある。それは動物たちを類として見るのではなく、一頭一頭個性を持つ存在としてながめることである。」という記述も興味深く読みました(p.193)。著者はアフリカのジャングルでゴリラ社会に受け入れられたそうです(p.198)。並大抵の工夫や努力では成し得なかったことではないかと思います。とても凄い方だなと思いました。最後に、ゴリラの母子関係の濃密さと子離れ・親離れの潔さは素敵だなと思いました(p.200)。