法楽日記

デジタル散策記&マインド探訪記

〔草稿6〕理由:自分自身の否定像の投影

これまでに見つけた〈怒り〉の原因は、《自己否定》の心傷への刺激と、《信念世界》に反する言動のふたつでした。どちらの場合も、顕在意識が認識する〈怒り〉の理由は、その時ちょうど見聞きしていた言動を道徳的に悪い内容へと脚色したものでした。

考えてみると、原因がまったく異なるにも関わらず同じような理由になるのは、とても不思議なことです。そこで、生まれてこの方の体験をあれこれと思い出しながら探察してみたところ、その仕組みの鍵を握っているのは、潜在意識における相手の《上下感》のようでした。

潜在意識における相手の《上下感》

人は無意識のうちに相手と自分を比較して、その場における上下関係を判定しているようです。その判定結果のことを、以下では潜在意識における相手の《上下感》と呼ぶことにします。《上下感》は、社会的な属性や個人的な特徴やこれまでの交流体験などから判定されるようです。

《上下感》は、大きく分類すると《上位》《同位》《下位》の3種類からなります。ただし、それぞれ度合いがあります。そこで、数直線をイメージして、《上位》がプラス、《同位》がゼロ付近、《下位》がマイナスと考えた方が分かりやすいかもしれません。度合い(もしくは数値)は、その時々の相手の言動に応じて細かく変動するようです。

そして、《上位》の人に対しては自分自身の理想像を投影するようです。また、《下位》の人に対しては自分自身の否定像(ネガティブ・イメージ)を投影するようです。なお、ここでの「投影する」は「色眼鏡で見る」のような意味合いです。したがって、相手をありのままに見ているつもりであっても、実際には色眼鏡を通して自分自身の理想像や否定像を見ていることになります。このとき投影された像のことを、以下では『投影像』と呼ぶことにします。

この『投影像』が、重要な役割を担っているようでした。

発生条件は《上下感》が《下位》

さて、潜在意識における相手の《上下感》について探察した結果、次のことがわかりました。

〈怒り〉の原因を五感が捉えると、すぐに〈怒り〉が発生するのではなく、まずは相手の《上下感》の度合いが《下位》方向に若干変動するようです。数直線のイメージで言うと、《上下感》の数値が若干下がるようです。

そして、その結果の《上下感》が《下位》である場合にはじめて、実際に〈怒り〉が発生するようです。

《上下感》が『投影像』を増幅する

また、《上下感》が《下位》である場合は、前述の通り相手に対して自分自身の否定像を投影します。

すると、その『投影像』の中に自分の中の嫌いなところをたくさん見てしまうので、(すなわち、〈怒り〉の原因その1が発生するので)、相手の《上下感》の数値がさらに下がります。その結果、相手に対して自分自身の否定像をさらに投影するようになります。これが何度も繰り返されます。

このようにして、《上下感》が一旦《下位》になると、《下位》の数値がどんどん下がり、『投影像』がどんどん増幅されます。それがどこまで進むかは、元になった〈怒り〉の大きさと、《自己否定》の度合いによるようです。

『投影像』が誤認により理由となる

ここまでをまとめると、〈怒り〉の原因を五感が捉えた結果として、〈怒り〉が発生したり、『投影像』が見えたりするのでした。

ところが、潜在意識は因果関係を誤認して、『投影像』が原因で〈怒り〉が結果だと誤解してしまうようです。そして、「あいつが××したから腹が立った」といったストーリーが創作されて、顕在意識に伝えられるようです。すなわち、顕在意識が認識する〈怒り〉の理由は、誤認により後付けされたもののようでした。

ただし、必ずしも『投影像』と〈怒り〉の間に因果関係を誤認できる訳ではないようです。例えば無性にイライラするときは、イライラの理由はわかりません。あるいは、〈怒り〉で我を忘れたときは、理由は後から考えないとわからないことがあるように思います。したがって、因果関係を誤認できた場合のみ、理由が後付けられるようです。

前掲の「自分の中の嫌いなところを見つけるためのワーク」でノートに書き殴られる言葉は、誤認により理由として後付けされた『投影像』の描写でした。

発生過程

以上より、〈怒り〉の発生過程は、〈怒り〉の原因に依らず次のように推測できます。

  1. 五感から入ってきた情報は、まずは潜在意識で処理されます。その際、《自己否定》の心傷が刺激を受けたり、《信念世界》に反する言動を見たりすると、下記が実行されます。

    • 相手の《上下感》の数値が下がります。(《下位》方向に変動します)

    〈怒り〉の原因が激しければ激しいほど、変動幅が大きくなるようです。

  2. 下記が並行して判定・実行されます。

    • 《上下感》が《下位》である場合は、相手に対して〈怒り〉が発生します。
    • 《上下感》が《下位》である場合は、相手に対して自分自身の否定像を投影します。その『投影像』により《上下感》の数値がさらに下がります。《自己否定》が激しいほど大きく下がります。下がり方に応じて、『投影像』は増幅されます。

    〈怒り〉が発生した場合のみ、以下に進みます。

  3. 潜在意識が〈怒り〉と『投影像』の間に直接的な因果関係があると誤認した場合は、「あいつが××したから腹が立った」のようなストーリーを創作します。これが〈怒り〉の理由となります。(誤認できなかった場合は、理由は作られません)

  4. 〈怒り〉と理由は、潜在意識から顕在意識へと届けられます。顕在意識はそれを鵜呑みにします。

※これは発見当時の推測です。

まとめ:理由

顕在意識が認識する〈怒り〉の理由は、相手に対して自分自身の否定像を投影した『投影像』が、因果関係の誤認により後付けされたものでした。言い換えると、相手を見ているようでいて、実際には色眼鏡を通して自分自身の否定像を見ているのでした。

そのため、〈怒り〉が発生する場合は常に、相手が悪者で自分たちが正義の味方という構図で認識されます。しかし、本当の事実関係は、冷静にじっくり吟味しないと分かりません。

これを知っていると、〈怒り〉に惑わされることがなくなって、日々の暮らしが穏やかになったり、過去の記憶の色合いが随分と穏やかになったりするのではないかと思います。そして、これが世界の常識として広まれば、争いごとが収まりやすくなり、世の中が平和になっていくのではないかと思います。

また、《自己否定》が強いほど、〈怒り〉の原因その1が発生しやすいだけでなく、『投影像』が大きく増幅されやすくなります。そのため、ちょっとしたことで激しい怒りが湧き上がってきたり、その蓄積から身の回りの人たちが大変な悪者に見えたりして、辛く苦しい日々を送ることになるのではないかと思います。《自己否定》を弱めることができれば、身の回りの人たちが穏やかに見えて、日々の暮らしが安らかになるのではないかと思います。