新潟県新発田市の小さな旅館「ますがた荘」は、ビジネス書などで成功事例として有名な旅館だそうです。なんと三代目・若旦那の踏ん張りで、倒産寸前の地方旅館から、予約が取れない人気旅館に変貌してしまったのだそうです。
成功の秘訣は、客層や季節に応じた「イチオシ」を見つけて上手にブランディングしたことにあるようです。
若旦那は最初は割烹旅館としてやっていこうと志していたそうです。しかしそれだけでは経営が苦しかったそうです。ところがあるとき、ある宿泊客が旅館の目の前にある「升潟(ますがた)」という池に飛来する白鳥に感動したことを知ります。そこで「白鳥の宿」として売り出すことにしました。またあるとき、団体客の目的が徒歩5分に位置する総合スポーツ公園を利用したスポーツ合宿だったことを知ります。そこで「合宿旅館」としても売り出すことにしました。
その結果、割烹・白鳥・合宿と3つの顔を持つ旅館になりました。小規模旅館ですので、これだけの顔を揃えるとどの季節も予約でいっぱいになったそうです。
ホームページもそれぞれの顔ごとに3つ立ち上げて、お客様目線でわかりやすく情報を提供しています。
- 割烹ますがた荘(地元の宴会・会食用)
- 白鳥の宿「ますがた荘」(観光客向け)
- 合宿旅館「ますがた荘」(スポーツ合宿向け)
白鳥が飛来する池が目の前にあることも、徒歩5分で総合スポーツ公園に行けることも、経営者のご家族にとっては当たり前の日常風景だったので、まさかそれを目的とした宿泊客が来るとは思ってもみなかったそうです。ただただ割烹旅館として創業以来の伝統を守ることしか考えてなかったそうです。
ところが若旦那がお客様の声を上手に拾って、お客様の目的に合わせたサービスを充実させることで、旅館の経営を建て直すことに見事に成功したそうです。
お客様の声を素直に拾うこと、その声を旅館サービスとして形にすること、そしてお客様目線でわかりやすく宣伝すること。「自分目線」ではなく「お客様目線」で考えることのできる若旦那だったからこそ、経営を建て直すことができたんだろうなと思いました。
- 割烹旅館「ますがた荘」写真 (Google Street View)
下記書籍の p.83〜101 を元に書きました。誤読・誤解等により間違った記述がございましたら誠に申し訳ありません。
- 久繁哲之介(著)「競わない地方創生 - 人口急減の真実」 (時事通信社, 2016/02/29)