法楽日記

デジタル散策記&マインド探訪記

浅野裕一(著)「古代中国の文明観―儒家・墨家・道家の論争」

浅野裕一(著)「古代中国の文明観―儒家・墨家・道家の論争」を読みました。春秋戦国時代儒家墨家道家の思想を中心に、太古から三皇五帝、夏、殷、周までの時代における文明観が紹介されています。

この本によると、春秋戦国時代の思想界の二大勢力は儒家墨家だったそうです。どちらも文明を肯定的に捉えていたそうですが、文明観は大きく違っていたそうです。儒家は大地や人々の生産力に対して楽天的だったこともあり、身分に応じた贅沢・散財・巨大墳墓を肯定的に捉えていたそうです。それに対して墨家は、大地や人々の生産力に対して悲観的だったこともあり、贅沢や巨大墳墓を戒め、節約を呼びかけていたそうです。巨大墳墓を戒めた墨家の声は始皇帝にの耳には届くことはなく、逆に墨家は秦の成立後に短期間で滅びてしまったそうです。

また、この本によると道家は文明に批判的だったそうです。無為を解く道家が、人為である文明に対して批判的だったのは理解できます。そして春秋戦国時代においては、人為を排し無為に生きると小国寡民老子「道徳経」第80章)となったであろうことは想像に難くありません。では、現代において人為を排し無為に生きるとどんな暮らしになるのでしょう…。もしかしたら小国寡民とは異なる結論になるかもしれないなぁとも思います。老子が現代に生きていたら何というか、聞いてみたいところです。

ところでこの本の第2章によると、言行一致を『信』と言い、言心一致を『誠』と言うそうです。言行心の一致具合で徳目を判断するのは分かりやすそうだと思いました。