法楽日記

デジタル散策記&マインド探訪記

二間瀬敏史(著)「重力で宇宙を見る」

二間瀬敏史(著)「重力で宇宙を見る」を読みました。前半では重力波の概説と検出までの歴史について、後半では重力レンズを用いた大宇宙の観測と宇宙論について、一般向けにわかりやすく解説されていました。

2016年2月に LIGO を用いた重力波検出の成功が発表されました。そこに到るまでには、観測精度の向上、観測知見の蓄積、重力理論との協力など、数十年に渡る努力と知見の積み重ねがあったそうです。重力波検出という偉業は、多くの物理学者による長年の蓄積の上に初めて実現したことがよくわかりました。科学史は人間ドラマなんだなと思いました。

ところでこの本によると、宇宙の構成要素は、普通の物質(バリオン物質)が約5%、暗黒物質ダークマター)が約27%、暗黒エネルギー(ダークエネルギー)が約68%からなるそうです(エネルギー密度での割合です)。そして現代物理学で観測できるのは普通の物質のみだそうです。すなわち現代の宇宙論は、宇宙の構成要素のうちのほんの一部(最大でも約5%)の観測結果のみに基づいて論じられているとも言えるようです。ところが重力レンズを用いることで、暗黒物質や暗黒エネルギーが観測できるようになるそうです。そこで、観測の実現に向けて多くの物理学者が協力して研究を進めているそうです。その観測結果を受けて、いつの日か、宇宙論の姿が大きく変わるかもしれません。

最後に全くの素人の感想ですが、物質(質量)とエネルギーと時空の関係について、次のどちらなのかよくわからないでいます。

(1)時空とは全く独立して物質(質量)やエネルギーが存在していて、物質(質量)やエネルギーには時空を歪ませたり揺らしたりする力がある。

(2)時空のみが存在していて、時空の歪みや揺れが物質(質量)やエネルギーとして観測される。

素人の頓珍漢な期待としては、全ては時空というスクリーンに投影された幻影だったという結論になると面白そうだなと思います(笑)