(1)種火と燃料
怒り(いかり)、貪り(むさぼり)、恐れ(おそれ)などネガティブな感情は、何かを見たり聞いたり思い出したりしたときに発火して、心の中に勢いよく燃え広がっていくように思います。すぐに消火できることもあれば、長期に渡って燃え盛ることもあると思います。
そのため、ネガティブな感情の原因を外に求めることが多いのではないかと思います。「××が悪い」「○○が欲しい」「△△は恐ろしい」などなど…
しかし本当の原因は、心の中にネガティブな感情の「種火」があることではないかと思います。何かを見たり聞いたり思い出したりしたことが「燃料」となって、「種火」がバッと燃え広がるのではないかと思います。もしも「種火」がなければ、「燃料」があってもまったく燃えないのではないかと思います。
『因』『縁』『果』で言えば、ネガティブな感情の原因『因』は心の奥底にある「種火」ではないかと思います。そして、外部の出来事『縁』が「燃料」となって、感情が燃え上がる『果』のではないかと思います。
しかし、一番長持ちする「燃料」は記憶ではないかと思います。記憶を「燃料」に燃え盛ると、新たな記憶が次々に生み出されて、「燃料」が尽きることがないのではないかと思います。
(2)種火を消す
生まれてこのかたの様々な体験を通して得たネガティブな感情を、心の奥底に押し込めて厳重にフタをして「なかったこと」にすることで、心のバランスを取っている人は多いのではないかと思います。
押し込められたネガティブな感情は、「種火」となって燻(くすぶ)っているのではないかと思います。そして再び燃え上がる日を待っているのではないかと思います。だからこそ、「燃料」を見つけるたびに勢いよく燃え上がるのではないかと思います。
心穏やかに暮らすために、「燃料」となりそうな出来事に近寄らないようにすることは、よく行われているのではないかと思います。しかしそれは対症療法にあたると思います。根本的には、心の奥底にある「種火」をすべて消してしまう必要があると思います。
(3)アヒンサーとサティヤ
私はアヒンサー(非暴力)とサティヤ(真実語)を私自身の戒にしたいと思っています。
アヒンサーの達成のためには、怒りの感情を消してしまわないといけません。また、サティヤの達成のために、誤認識の元凶となるネガティブな感情全般を消してしまいたいと思っています。ご存知のように私は煩悩の塊なので、その過程は困難を極めることと思います…
また、、この作業を通して「貪り(むさぼり)」の感情について理解を深めることができれば、アスティーヤ(不盗)も戒として視野に入ってくるかもしれません。地球に住むいのちのひとつとして分をわきまえた生き方をするという意味ではないかとも思いますが、その場合、単に「盗まない」だけでなく「譲る」「与える」も含まれているのではないかと思います。どんな塩梅に捉えるとよさそうか、何かヒントを掴めるとよいなと思っています。
(4)五戒と公案
生まれてこのかたの経験は、一人一人まったく異なっていると思います。その結果、目標とする生き方も大きく異なっているのではないかと思います。
いつしか私は「人生は神様からいただいた公案」だと思うようになりました。
また、インドの伝統的な五戒は単なる道徳律ではなく、公案を解くための重要な鍵が秘められているのではないかと思うようにもなりました。そこで、五戒を自分なりに理解して少しずつ実践したいと思っています。長い長い道のりだと思いますが、公案を解く鍵が少しずつ見つかるのではないかと思っています。