法楽日記

デジタル散策記&マインド探訪記

大切な話を意図通りに受け取る

(1)人の話を聞く

人様のお話をちゃんと聞くのは私には難しく、ついつい見当違いの空想を膨らませてしまいます。誤解したりされたりの経験から、空想の膨らませ方には大きく分けて3通りあるように思います。

  1. 「私は特別にエライ」ことを前提として空想を膨らませる。
  2. 「世間は悪人だらけ」であることを前提として空想を膨らませる。
  3. 「私はダメ人間」であることを前提として空想を膨らませる。

同じ人でも場合によって空想パターンが変わるようです。しかし、人それぞれ得意な空想パターンがあるようにも思います。また、自己否定が強ければ強いほど、空想を大きく大きく膨らませるばかりか、その空想と事実の区別がつかなくなる傾向があるように思います。


(2)人助け

1番目の「私は特別にエライ」ことを前提として空想を膨らませる人は、「私はズバ抜けて優秀で、慈愛にあふれ、誰からも尊敬される人物だ」と思いたい傾向があるように思います。ここでは仮にAさんとします。

ある日、AさんはBさんの話を聞いて、「どうやらBさんは○○で困っているようだ、それは□□で解決できそうだ、よし、人助けだ!」と空想して、共通の友人たちと相談して実行プランを立てました。そしてAさんはBさんに「ちょっと困ってるので、△△を手伝って欲しい」と持ちかけました。Aさんとしては、△△から入って□□につなげて、○○を解決する、という計画のつもりでした。

ところがBさんにとっては、ある目的のために○○の優先度を一時的に落としているだけでした。逆に、□□になると目的の達成が困難になって困った状況に陥ってしまいます。実はAさんは人の話をちゃんと聞かないで、空想を膨らませて早とちりしていたのでした。

しかし、Bさんとしては友人のAさんが困っているのであれば、助けないわけにはいきません。自分の計画を一時中断して、Aさんを助けることにしました。ところがAさんにとっては、△△はBさんを助けるための作戦です。要求レベルを段々とあげて□□を達成する計画です。

AさんはBさんのためだと思って、叱咤激励して△△をさせようとします。一方、Bさんとしては貴重な時間を削ってAさんを助けているつもりです。それなのに、Aさんの要求はどんどんエスカレートします。Bさんはそろそろ限界だと思って、△△から降りたいと言うと、Aさんは脅したり騙したり暴れたりして△△させようとします。両者の関係は険悪になります。

ところが共通の友人たちはAさんの空想を信じているので、Bさんは△△をすべきだと信じて疑いません。Bさんはヤル気のない恩知らずだという評判が広がってしまいました。そのためBさんの話を誰も聞いてくれませんし、一体全体なにがどうなってるかも、まったくわかりません。Bさんの選択肢は、Aさんの空想に飲み込まれるか、Aさんと決別するか、二つに一つではないかというくらい精神的に追い込まれてしまいました。

AさんはBさんのために尽力したつもりなので、お礼代わりにと△△の成果を独り占めにしました。共通の友人たちはAさんを賞賛し、Bさんを非難しました。Bさんは貴重な時間を奪われて計画が大幅に遅れた上に、友人たちの信頼を失って途方に暮れるしかありませんでした。

この話の特徴は、(1) AさんはBさんに対しては徹底的に秘密主義で、Bさん以外には積極的に空想話を広めた、(2) AさんはBさんに嘘をついたり、脅したり、暴れたりなど強引な手段で計画を推進した、(3) Aさんは名声と財産を得て、Bさんは苦境に追い込まれた、ことにあると思います。はたして、Aさんの空想の動機は純粋だったのでしょうか…

随分前に時代劇で、威厳あふれる主君の前で平身低頭した家臣が「恐悦至極に存じます」と言うシーンを見たことがあります。ストーリーはすっかり忘れてしまいましたが、そのシーンだけは印象深く覚えています。はたして家臣は心の底から喜んでいたのでしょうか、それとも煮湯を飲まされる思いで降伏したのでしょうか…

1番目の「私は特別にエライ」ことを前提として空想を膨らませる人は、例えばこのような空想をする人のことです。


(3)困った人

2番目の「世間は悪人だらけ」であることを前提として空想を膨らませる人は、人の話を聞くときにすぐに「嘘を言ってるのではないか」「ズルをしようとしているのではないか」と考えてしまう人のことです。ここでは仮にCさんとします。

ある日、CさんはDさんから相談を受けました。「いま○○で困っています、助けてください」

Cさんは、この人は嘘を言ってズルしようとしてるんだと思って、鼻で笑いながら聞き流しています。一方、Dさんは恥を忍んで真剣に相談しています。Dさんは困りに困って、ありえない状況に陥ってます。Cさんはそれを聞いて「そんな状況の人がいる訳がない、騙されないぞ」と思って、内心では怒鳴りつけたい気分でした。そこで共通の友人たちにDさんについての悪態をついて回りました。Dさんの話の内容は、誤解に基づいて大きく変更されてました。その結果Dさんの信用は地に落ちて、ますます困難な状況に陥ってしまいました。

この話の特徴は、(1) CさんはDさんに対しては徹底的に秘密主義で、Dさん以外には積極的に空想話を広めた、(2) Cさんは鬱憤を晴らしてスッキリして、Bさんは困難を極めてしまった、ことにあると思います。はたして、Cさんの空想の動機は純粋だったのでしょうか…

2番目の「世間は悪人だらけ」であることを前提として空想を膨らませる人は、例えばこのような空想をする人のことです。


(4)駄目な人

3番目の「私はダメ人間」であることを前提として空想を膨らませる人は、何があっても「私はダメ人間だ」という結論になる人です。仮にEさんとします。

ある日、EさんがFさんと話をしていると、Fさんの表情が一瞬曇りました。Eさんは「私がそばにいるからムカムカしてるんだ」と思いました。しばらくすると、Fさんはうっかりペンを落としてしまいました。Eさんは「私のせいでペンが落ちたんだ」と思いました。議論の中で、FさんはEさんの知らないことを話しました。Eさんは「やっぱり私は徹底的にバカなんだ」と思いました。交渉に移って、Fさんは押したり引いたりしてきます。Eさんは「私は人様を困らせることしかできない悪い人だ」と思いました。Eさんは話をすればするほど、いたたまれない気持ちになっていきます。過去の失敗も思い出して、ドン底にまで落ち込んでしまいました。Eさんは「私は世の中に存在してはいけない人なんだ」と悲観して、今すぐ消え入りたくなって、自分の殻の中に閉じ籠って何も聞こえなくなってしまいました。

空想家のカモにはもってこいのタイプです。

3番目の「私はダメ人間」であることを前提として空想を膨らませる人は、例えばこのような空想をする人のことです。


(5)小さな嘘より大きな嘘

ここに挙げた例は架空のもので、典型的なパターンなのか、特殊なパターンなのかはわかりません。しかし、空想レベルとしては序の口の部類に入ると思います。経験的に、事実と空想の乖離がありえないくらいに大きければ大きいほど、デタラメがまかり通るような印象を持っています。

かつてアドルフ・ヒトラーは「大衆は小さな嘘より大きな嘘にだまされやすい」という趣旨のことを著書に書いたそうです。空想でもまさに同じようなことが起きるように思います。

アンデルセン童話『裸の王様』でも、ありえない話に宮殿中が騙されます。


(6)サティヤ

私はサティヤ(真実語)を戒のひとつにしたいと思っています。一般には、「真実を話す、嘘は言わない」のような意味として説明されているようです。

しかし私は、相手の話を意図通りに受け取ることもサティヤの重要な一部と考えた方がよいのではないかと思っています。事実でないことを心の中に持ち込むと、それ以降の真偽の判断に狂いが出て、事実でないことをあたかも事実であるかのように思ったり語ったりする可能性が出てくるからです。同様に、噂話の裏取りも重要だと思います。

以上より、昨日書いたアウトプットにおける「身口意一致」と、今日書いたインプットにおける「意図通りに受け取る」を、私の勝手解釈におけるサティヤ戒の内容としたいと思っています。