法楽日記

デジタル散策記&マインド探訪記

話の内容を理解しなくても、気持ちが噛み合っているかのように会話できてしまう

(1)イライザ

近年、人工知能(AI)が大きく注目されるようになりました。現代では機械学習が注目を集めているようですが、かつては人間がプログラムとして書いてました。

半世紀余り前のこと、ELIZA(イライザ)と呼ばれるチャット・プログラムが話題を呼んだそうです。単純なパターン・マッチで応答するだけの比較的簡単なプログラムだったそうですが、当時は人間が応答していると勘違いする人が多かったそうです。

話の内容を理解しなくても、気持ちが噛み合っているかのような会話ができてしまう…

これは ELIZA だけでなく、ひょっとしたら私たち人間も日常的に行っていることかもしれません。


(2)人間イライザ

私は血行があまりよくないので、脳も体も省エネ/ゼロエネが求められます。また、判断能力が低いのでできるだけ慎重に行動すると同時に、各種の上限値が低いので過負荷にならないよう気をつけています。いずれも意識のどこかで行われているので、脳が疲れてくると上手にコントロールできなくなることがあります。

例えば、会話はまだまだ負荷が大きいので必要最小限にとどめるようにしています。しかしうっかり限界値を超えてしまうと、リミッターが外れて中身のないことを発話し続けることがあります。そのような状態になったときは、脳がかなり疲労しているため、もはや内容を十分には理解できません。そこで聞き取れた単語から連想できたことを、考えなしに発話するような状態になってしまいます… 喩えるなら「人間 ELIZA」のような状態です(笑)


(3)表面と内面

私は会話で脳が過負荷状態になったときに「人間 ELIZA」になることがありますが、世の中には意図的に「人間 ELIZA」になる人がいるように思います。

例えば、目上の人やお客様とお話しするときに、内容を理解できなくても表面的に話を合わせた方がよい場合があるかもしれません。正直に「わからない」「興味がない」と言うよりも、上手に話を合わせた方が礼儀にかなっていたり、相手に喜ばれたりするのかもしれません。

そのような状況では、口から発する言葉(表面)と、心の中で思っていること(内面)が、大きく違っているのではないかと思います。この例のように、表面と内面が大きく異なっている状態は、社会生活の中でよくあることなのかもしれません。


(4)上司と部下

例えば、上司を喜ばせることを最優先に考える人が、出世してプロジェクト・リーダーに抜擢されたとします。以下では仮にAさんとします。

おそらくAさんは、プロジェクトの進捗について上司から報告を求められたときも、上司を喜ばせることが最優先です。万一、プロジェクトに問題が発生していても、上司を喜ばせるために期待以上の成果を収めているかのように報告します。

なぜならAさんは、部下を怒鳴りつけるだけで問題がすぐに解消すると思っているからです。部下も自分と同様に、上司を喜ばせることを最優先に考える人たちだと思っていからです。

しかし、物事はそんなに思うようには運びません。本来であれば、Aさんは状況を正確に把握して、問題の解消に努める立場にあると思います。顧客との打合せ不足に原因があるのか、マンパワー不足に原因があるのか、メンバーが個人的な問題を抱えていて遅れているのか、そもそも計画に無理があるのか、などなどの原因によってAさんがとるべき行動は変わります。

そういった内部事情をすべて無視して、上司の前では表面を取り繕って、部下の前では怒鳴り散らしてばかりだとしたら、Aさんはある種の「人間 ELIZA」と言えるかもしれません。


(5)建前と本音

私は噂話自体には興味はありませんが、私の限られた体験から考えると、どうやら噂話で大切なことは「この場ではこう言う話にしておこう」と認識合わせをすることにあるように思います。例えば有力者の顔を潰さないようにしたり、対外的な面目を保つためであったりすることがあるようです。一人一人の認識と関係なく、噂話に話を合わせることが重要視されているのではないかと思います。噂話でも、表面と内面の乖離があるのではないかと思います。

そう言えば、「建前と本音」という言葉をよく聞きます。表面と内面が異なることは、日本社会では常識的で当たり前のことなのかもしれません。


(6)オープンな態度

一方で、物事をできるだけオープンにして、理解すべきことはできるだけきちんと理解しようとする人たちもいるように思います。人間には得手不得手があるので、どうしても分野によって理解力が異なります。理解の限界は正直にお話しながら、できる範囲で理解に努めます。理解を日々更新しながら、適時話し合いながら物事を進めていきます。

お客様や上司の中には「人間 ELIZA」を好む人がいるかもしれません。あるいは、はったりを駆使する人を好む人もいるかもしれません。したがって、「人間 ELIZA」とはまったく異なる顧客層・上司層とお付き合いすることになると思います。ひょっとしたら、現代日本においては居場所が限られているかもしれません。

それでもオープンな態度に憧れます。私自身がそんな立派な人間ではないだけに(笑)憧れます。


(7)サティヤ

インドにサティヤ(satya)という言葉があるそうです。「真実」という意味だそうです。インドの伝統的な五戒のひとつでもあり、その場合は「真実を話す、嘘は言わない」のような意味になるようです。

私はサティヤ(真実語)を戒のひとつにしたいと思っているのですが、いまいちイメージがわかないでいました。

しかし、身口意一致だと思うと意味がわかりやすくなるように思います。心で思っていることと、言葉と、行動を常に一致させる、という意味です。この場合、「人間 ELIZA」になることはできなくなると思います。そして、前節のオープンな態度しか取れなくなると思います。

身口意一致に従うと、間違いだとわかっていることを口にできなくなると思います。事実か仮説しか話せなくなると思います。

勝手解釈ではありますが、サティヤをそういう方向で理解しようと思っています。