法楽日記

デジタル散策記&マインド探訪記

藤井一至(著)「大地の五億年」

藤井一至(著)「大地の五億年」を読みました。著者は土壌の研究者です。本書はアカデミックな視点から、著者が世界各地で観察した様々な種類の土壌について紹介されてました。

以下は私なりのメモです。ど素人のメモなので誤解がたくさんあると思います。誠に申し訳ありません。


この本によると地球は46億年前に生まれて、土壌は5億年前にようやく産声を上げたそうです。それから5億年かけて現在の土壌へと進化したそうです。

土壌の元は岩石だそうです。岩石が風化して砕けて、そこに海から植物が進出してきたうです。そして、無機物と有機物と生命が混在してできあがったのが、現在の土壌だそうです。水分や空気も含まれているそうです。そのため、元になる岩石によって、そこに生きる生命によって、気候によって、さらには5億年の歴史によって、土壌の種類は大きく異なるそうです。

一方、植物は原産地の土壌や気候や生態系に合わせて進化してきました。それを人間の都合で「品種改良」して、世界各地で栽培しています。品種改良しているとは言え、収量を増やそうと思ったら、植物に合わせて「土壌改良」しないといけません。その方法論には様々なものがあるようです。


土壌を理解するための方法論にも、いくつか種類があるようです。

知見の蓄積が一番多いのは、化学分析による理解のようです。植物が必要とする元素は何か、土壌中ではどのような分子(イオン)形態となっているか、土壌からの元素の出入りはどんな具合か、pH はどのくらいが適切か、不足分を補うにはどうすればよいか、過剰分を取り去るにはどうすればよいか、元素を「雑草」に奪い取られないようにするにはどうすればよいか、そういった視点から分析するようです。

次に知見の蓄積が多いのは、生命の特性や関係性の分析を通した理解のようです。土壌中の植物、菌、微生物、動物、ミネラルの働きや相性を調べて、総体としての動きを理解していくようです。全体像を理解するには、これからも相当量の知見の蓄積が必要ではないかと思います。

土壌をどのように理解するかによって、「土壌改良」の方法論が変わってくるようです。現在広く行われている「慣行農業」は主に前者の視点に立つようです。最近よく聞くアグロエコロジーは後者でしょうか…


下記の映像は、ふたつめの立場からの土壌の説明です。日本語字幕付きで11分55秒です。三次元アニメーションのお蔭でわかりやすく仕上がっています。

土壌はとても奥深くて、興味深いです。


〔追記 2021-06-15〕

藤井一至(著)「大地の五億年」を改めて読みました。2ヶ月くらい前に読んだときは、土壌の「ど」の字も知らなかったので、あまり理解できなかったからです。今回は前回よりは理解できたと思います。

ところで、前回も気になったのですが、プロローグに下記の記述があります。どう見ても、五行の方位と色の関係です(参考:木=東=青、火=南=赤、土=中=黄、金=西=白、水=北=黒)。

『中国の古代王朝・秦の始皇帝の陵墓の地下に眠る兵馬俑土人形)は、作成当時、五色(黄・黒・白・青・赤)で塗られたカラフルなものであったという。黄色は黄土高原、黒色は東北部の黒土地帯、白色は西部の砂漠地帯、青色は長江周辺の水田土壌(湿地)、赤色は南部の亜熱帯土壌を表す。土は、地域によって異なる風土を象徴するものであった。』(p.21)

そこで調べてみると、五行と土壌の関係については下記資料にも記述がありました。もしかしたら、土壌関係者には有名な話なのかもしれません。

社稷壇に用いられている土壌の色は,中国の土壌分布の概貌をよく示しているといえる。中国の中部は黄土高原と黄土由来の沖積平原,北方には有機質を多く含む黒色あるいは暗色の森林土壌と黒土帯が,西方には砂漠と砂漠縁辺を構成する白色(浅灰色)の灰鈣(カイ)土が,南方には紅壌地帯があり,東方には沿海地区の湿地のグライ土壌(水に漬かって青灰色を示す土)があり青色を呈するとしてよい。現代の土壌学の知識から見ても,方位と土色との関係には大きな齟齬はないとしてよかろう。』

さらに調べてみると、藤井一至さんは京都大学農学研究科出身、久馬一剛さんは京都大学農学部の名誉教授で、お二人とも土壌の研究者です。また趣味のテニスでも交流があったようです。とても深いご縁があるようですので、上述の情報も随分前から得ていたのかもしれません。