法楽日記

デジタル散策記&マインド探訪記

吉田太郎(著)「タネと内臓」

吉田太郎(著)「タネと内臓」を読みました。

以下は、読後に作成したメモです。誤解・誤記などありましたら誠に申し訳ありません。


(1)根と腸

植物の根と動物の腸は、ある観点から見ると、とても似ているそうです。

どちらも微生物の働きがあってこそ(有機物を根や腸が吸収できる形に分解してくれるからこそ)、栄養分を摂取できるそうです。大切な微生物にしっかり働いてもらえるように、根の周りも腸内も、微生物が暮らしやすい環境が整えられているそうです。


(2)タネと農薬

ところが、人工的な化学物質の中には、根の周りや腸内の微生物の生活圏を破壊するものがあるそうです。

例えば除草剤や抗生物質として使われているグリホサート。強力なキレート作用により、ミネラルを捕まえて離さなくなるそうです。その結果、植物や微生物にとって重要な「シキミ酸経路」がミネラル不足で働かなくなって、植物が枯れたり、微生物が死んだりするそうです。

そのため、農業の現場でグリホサートを除草剤として利用しようと思ったら、グリホサート耐性を持った(=遺伝子組み替えされた)特別のタネが必要になるそうです。農家はタネと農薬の両方を買わないといけなくなるそうです。


(3)作物と農薬

グリホサート耐性を持ったタネと言えども、グリホサートの持つキレート作用の影響か、ミネラル分の非常に少ない作物になるそうです。また、ミネラル不足で作物の酵素が十分には働かなくなり、害虫を寄せ付けやすくなってしまうそうです。さらに、グリホサートの働きで土壌中の微生物もほとんど死んでしまい、生き残ることのできる微生物は、偶然にも毒物を生成する種類のものだけとなるそうです。

それだけ影響力のあるグリホサートが、万一、動物や人間の腸内に入ってきたとしたら…、腸内細菌は大きなダメージを受けて、健康にも大きな影響が出ることが予想されます。実際、WHO の外部組織「国際がん研究機関(IARC)」は「おそらく発癌性がある」と評価しているそうです。米国の裁判では、グリホサートの製造元企業(モンサント)が敗訴しています。


(4)家族農業

現代の企業型農業では、多額のお金が動きます。農業機械等に設備投資して、タネ・肥料・農薬を毎年買って、人件費を払って、そして収穫物を売って、その差額を儲けとしています。金融機関から融資を受けている場合は、利払いも発生します。すべての活動がお金に換算されるため、相場や金利の影響をモロに受けます。大儲けの年もあれば、大赤字の年もあるそうです。

一方、家族型農業は大きな投資はせず、状況に応じて柔軟に工夫しながら暮らしていけるので、大儲けできない代わりに、大赤字もないようです。生態系を大切にしながら、安全な食べ物を作っていきやすいようです。国連は2019年〜2028年を「国連家族農業の10年」と定めて重視しているそうです。

アニメ『未来少年コナン』で喩えるなら、インダストリア型農業か、ハイハーバー的農業か、みたいな話かもしれません。ハイハーバー的農業にいたる道のひとつが、この本でも紹介されているアグロエコロジー(農業生態学)かもしれません。


(5)自然に帰る

以下は私の感想ですが、現代の生命科学は、生命の働きを単純化しすぎているのではないかと思います。

本来の生命の働きは、人類の理解力を遥かに越えているのではないかと思います。現代の人類は、生命活動のほんの一部を垣間見ているにすぎないと思います。それなのに大部分をわかっているつもりになって、生命の働きに手を入れようとしているのは、とても危険な行為だと思います。

同様に、現代の人類の科学力では、自然農法のメカニズムを十分に理解するのはまだまだ難しいのではないかと思います。もうしばらくは、完全に再現することが難しい、職人芸的でミステリアスな状態が続くのではないかと思います。

生命工学も、地球工学も、原子力工学も、全体のほんの一部を垣間見ただけで、全体がわかったつもりでいる危険な状態にあるのではないか…

自然を直したり変えたりするのではなく、自然に帰るべきではないか…

そんなことを思いました。


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