法楽日記

デジタル散策記&マインド探訪記

注入式教育や暗記式教育は囲碁の敵

2016年3月に開催された「アルファ碁VS李世ドル」の五番勝負を解説した本をパラパラと拝見しました。低級位者の私には難しすぎましたが、余談として書いてあった話がとても興味深かったので紹介します(以下、p.112〜114より)。


(1)常に「なぜ?」

著者によると、囲碁は他人の真似をしているだけでは絶対に強くなれないそうです。「注入式教育や暗記式教育は囲碁の敵だ」とまで書いています。大切なのは、常に「なぜ?」と反問することだそうです。

「これが最善だ!」と思っても、常に「なぜ?」と反問する。まだ見落としがあるかもしれないし、創造性が足りないだけかもしれないし…。気分を変えたり、日をあけたりして、新たな視点で「なぜ?」と反問する。それを繰り返すことが大切なんだと思いました。

(2)自由闊達な議論

囲碁世界戦の優勝争いは、1990年代前半までは日本の独断場でした。ところが1990年代後半から中韓の争いとなり、日本はほぼ蚊帳の外です。なぜ日本は優勝争いから遠ざかってしまったのでしょうか?棋譜解説の合間に、著者の見方が書いてありました。

世界戦の中には「相談碁」で打たれるものがあるそうです。「相談碁」はチームで相談して次の手を決める碁だそうです。ある年のこと、韓国チーム・中国チームは喧々諤々の議論をして次の一手を決めているなか、日本チームだけはリーダーが次の手を考えてメンバーは唯々諾々として賛成する形で進めていたそうです。その話を聞いた著者は、仮に日本にこのような文化(忖度文化?)が根付いているとしたら、日本の未来は暗い、思ったそうです。私もまさにその通りだと思いました。

常に「なぜ?」と反問する。そして誰とでも(目上の人とでも)自由闊達に議論する。先日読んだ藤井聡太二冠の師匠の著書とも符合する内容でした。囲碁や将棋に限らず、そのような文化を育てることはとても大切なことだと思いました。


アルファ碁 対 イ・セドル の話に戻ります。

つい5年前まで、AI囲碁がプロ棋士に勝つようになるのは遥か未来のことだと思われてました。ところが2016年3月、Google DeepMind 社が開発した AlphaGo が世界的トップ棋士である韓国のイ・セドル九段と五番勝負を戦って4対1で勝ちました。AlphaGo の成功に触発されて、今ではプロ棋士より強いAI囲碁は多数存在しているようです。また、プロ棋士の研究でもAI囲碁が活用されているそうです。

その転換点となった記念すべき五番勝負は、当時私もネット中継で時折拝見しました。イ・セドル九段が勝利した第4局はもらい泣きしました。この本の著者はイ・セドル九段と親しい同年代のプロ棋士で、韓国内のテレビ解説を担当された方です。五番勝負におけるイ・セドル九段の心の動き、深い読み、プロ棋士の驚愕、様々なことが伝わってくる本でした。

私も囲碁の奥深さが理解できるようになると、この本をもっと楽しめるだろうなと思いました。いつの日か…