法楽日記

デジタル散策記&マインド探訪記

ブルース・シュナイアー(著)「超監視社会」

ブルース・シュナイアー(著)「超監視社会」を読みました。三部構成で、第一部は巨大ネット企業や国家機関による大規模監視の実態、第二部は大規模監視によってもたらされる社会の危機、第三部は事態改善のための提案が書かれていました。著者はセキュリティー技術の専門家として著名な方です。

この本によると(記憶の範囲では)、人々の発言や行動を集めれば集めるほど、下記のような効果が期待できるそうです。

  1. 一人一人に満足度の高いサービスを提供できる。
  2. 適切な広告を表示できる。適切な営業がかけられる。
  3. 好ましくない言動を見つけやすくなる。
  4. 人々の行動パターンを浮き彫りにしやすくなる。

このように一人一人のプライバシー情報(個人情報、ネット利用状況、位置情報、など)には大きな価値があるため、秘匿にすべきという強い意見がある一方で、実際には企業間で売買されたり、政府により接収されたりしているそうです。

第一部の実態篇によると、、都市部の街角に設置された監視カメラの中には、AI技術を用いて顔や歩き方から一人一人の人物を特定できるものがあるそうです。また、デジタル機器の普及とAI技術の進展により、プライベートな場でのうっかり言動やビジネスの場での言動までもが予期せず記録され解析されて、意図せず第三者に知られる可能性があるようです。そういった様々なデータを買い集めて付き合わせることで、一人一人の行動を詳細に把握できる時代となっているようです。個々の機器の直接的な設置動機とは関係なく、実質的に監視社会が現実のものとなってきているようです。あの世で閻魔大王と面会するまでもなく、この世でこれまでのあらゆる行状を見せつけられて目を白黒させるしかない状況が現実のものとなる日は近いかもしれません…

第二部の危機篇によると、、これから先、プライバシー・データが公開・売買・押収の対象となってしまう状況が進むと、様々な悪影響が問題になってくるかもしれません。例えば、人々の言論活動が萎縮してしまう可能性は十分に高いそうです。国によっては政府による監視や逮捕の対象となってしまうかもしれません。また、何気ない言動が誤解されて、妨害や迫害にあったり、犯罪者として扱われたりするかもしれません。万一、プライバシー・データが悪しき心の人の手に渡ると、脅迫のネタに使われてしまうかもしれません。あるいはビジネス上の機密が筒抜けになって、大きな損失につながるかもしれません。業者に手の内をすべて知られて、上手に誘導されて、高い買い物をしてしまうかもしれません。油断できない世の中になりつつあるようです。

第三部の提案篇は、米国らしい発想に立っているなと思いました。