法楽日記

デジタル散策記&マインド探訪記

バーバラ・ストック(著)「ゴッホ 最後の3年」

バーバラ・ストック(著)「ゴッホ 最後の3年」を読みました。1888年2月にパリを発ってから、アルル、サン=レミ、そしてオーヴェル=シュル=オワーズと移り住み、1990年7月に亡くなる直前までの約2年半が描かれたグラフィック・ノベルです。弟で画商のテオとの手紙がいくつか紹介されていたり、ゴッホが描いた絵が紹介されていたりと、ゴッホのことをあまり知らない私にもわかりやすい構成でした。

この本を読んで、当時30代半ばだったゴッホも周りの人たちも、あの時代を懸命に生きていたんだなと思いました。一般に、世間の常識から外れている人は、生きるのが大変であると同時に、世間の人たちとは違うことを成し遂げる可能性を持っていると思います。ゴッホ自身はなぜ生きるのが大変なのか理解できないまま、懸命に人生を駆け抜けたんだと思いました。ゴッホと関わった人たちは様々な気まずい思いをしながらゴッホとの距離感を探っていたのでしょうし、ゴッホの制作活動を支えた弟テオもきっと大変な思いをしながら画商としての人生を送ったのだと思います。

この本の範囲外となりますが、テオの妻ヨーは苦悩を乗り越えて義兄の宣伝活動に勤しむ中で、売れない画家と売れる画家に対する世間の態度の違い、金の成る木にすり寄って来る人々の言動を、嫌というほど見せつけられたのではないかと思います。ゴッホのセリフ「画家にとっての名声とは、ホタルにとってのピンのようなものだ」(p.122)はゴッホの本音だったんだろうなと思いました。(意訳:名声とは、ホタルの明かりを髪飾りにするためのピンのようなものだ、確かに目立つが身動きが取れず、確実に死に至る)

この本はアムステルダムゴッホ美術館監修で、オランダで最も読まれているグラフィック・ノベルだそうです。そして世界20カ国以上で刊行されているそうです。日本語版はA5判全144ページです。駐日オランダ大使館Facebook ページでも紹介されてました。

《リンク集》

2019年度後半に東京と神戸でゴッホ展が企画されているそうです。