法楽日記

デジタル散策記&マインド探訪記

永田和宏(著)「僕たちが何者でもなかった頃の話をしよう」

永田和宏(著)「僕たちが何者でもなかった頃の話をしよう」を読みました。京都産業大学平成28年(2016年)〜平成29年(2017年)に8回に渡って開催された公開対談「マイ・チャレンジ」から、平成28年(2016年)の4回分を元に作られた本です。

コーディネーターは細胞生物学者であり歌人でもある京都産業大学教授・永田和宏さん。『お招きしたのは、私がよく知っていて、しかも尊敬している方々ばかりであるが、この講演と対談で感じてほしいものは、決して彼らがいかに偉大であるかということではない。端的に言って、あんな偉い人でも、なんだ自分と同じじゃないかということを感じとってほしいというのが、この企画の意図であり、狙いである。』(p.7)とのことです。

登壇者は山中伸弥さん、羽生善治さん、是枝裕和さん、山極壽一さん。講演も対談もとても興味深く拝読いたしました。登壇者全員に共通しているのは「想定外を楽しんでいる」ことだと思いました。すべてを想定内に収めるために想定外を切り捨てていく生き方ではなく、想定外の事態に心踊らせて探究していく生き方。だからこそ想定外の成果を出し続けられるのだと思いました。

第1回の登壇者・山中伸弥さんは30歳(平成5年=1993年)から35歳(平成8年=1996年)まで米国で研究生活を送っていたそうです。米国での研究は大変順調だったそうですが、帰国後はしばらく絶不調に陥ってしまったそうです。米国暮らしのエピソードの中で下記のお話がとても印象に残りました。

『山中:二人の子どもがまだ小さかったときに一緒に行ったのですが、一番違いがあったのは、子どもの教育ですね。上の子は日本で幼児教室みたいなところに通ってからアメリカに行ったんですが、やり方が全然違うんです。日本にいるときは、お絵描きするにしても、テーマが決まっていて、それをどうしたらうまく描けるかということを教えてもらって、「ああ、上手にできましたね」という感じでした。ところが、アメリカに行くと、いきなり真っ白なキャンバスとクレヨンだけ渡されて、「はい、どうぞ」と。何を描けとも言われなくて、好きなものを好きに描きなさいという。だから子どもは、最初すごく戸惑って、どうしていいかわからなくなってしまったんです。でも、しばらくしたらどんどん絵を描きだして、今では絵が大好きです。どちらがいいかはわかりませんが、本当に違うなと感じましたね。』(p.44〜45)

上記以外にも興味深いエピソードが全巻を通して散りばめられていました。とても面白かったです。

【書籍】山中伸弥,羽生善治,是枝裕和,山極壽一,永田和宏(共著)「僕たちが何者でもなかった頃の話をしよう」 (文藝春秋, 2017-02-17)

【資料】京都産業大学 特別対談シリーズ マイ・チャレンジ (第1回〜第4回)

  • 第1回 山中伸弥「失敗を恐れずに挑戦を!」 (2016-01-21)
  • 第2回 羽生善治「挑戦する勇気」 (2016-04-12)
  • 第3回 是枝裕和「映画を撮りながら考えたこと」 (2016-07-06)
  • 第4回 山極壽一「サルとゴリラを追った半世紀」 (2016-10-18)

[ご参考]第5回〜第8回も書籍化されています。

【書籍】池田理代子,平田オリザ,彬子女王,大隅良典,永田和宏(共著)「続・僕たちが何者でもなかった頃の話をしよう」 (文藝春秋, 2018/02/20)

【資料】京都産業大学 特別対談シリーズ マイ・チャレンジ (第5回〜第8回)

  • 第5回 池田理代子「自分が今ここにいる意味を見つけよう」 (2017-01-17)
  • 第6回 平田オリザ「わかりあえないことから」 (2017-04-28)
  • 第7回 彬子女王「石橋を適当にたたいて渡る」 (2017-07-04)
  • 第8回 大隅良典「知りたいという欲求」 (2017-10-13)