法楽日記

デジタル散策記&マインド探訪記

中野京子(著)「名画と読むイエス・キリストの物語」

中野京子(著)「名画と読むイエス・キリストの物語」を読みました。イエス・キリストを題材とした絵画をより深く鑑賞できるように、絵画の題材として取り上げられることの多いエピソードを中心にイエスの生涯を紹介しています。あくまで絵画をより楽しむための本ですので、神学的・歴史的な正確性よりも、画家たちが心の内に思い描いていたであろうイエスの生涯を紹介することを重視しているように思いました。紹介されているのはイエスの誕生前後とヨハネによる洗礼から復活までの数年間です。イエスのエピソードの紹介に合わせて、43点の名画がカラーで掲載されています。

この本によると古代ユダヤでは男子は13歳、女子は12歳で成人とみなされて、10代半ばまでに結婚する人が多かったそうです。ですからヨセフとマリアは13歳〜15歳頃に結婚したものと思われるそうです。ということは、30歳で出家したイエスには子や孫がいたとしても不思議ないように思いました。もしかしたら、30歳まで民衆の一人として平凡な暮らしをしていたからこそ当時の人々の気持ちや苦労が手に取るようにわかり、だからこそ相手の心に染み入る言葉で語りかけることができたのかもしれません。そんな風に考えるとイエスがより魅力的に思えてきました。

この本を読んではじめてイエスの「贖い(あがない)」が持つ重みを感じることができたように思いました。そしてキリスト教はふたつの大きな強みを持っているんだなと思いました。ひとつは、イエスに絶対的に帰依することで、どんなに大きな心の苦しみを持つ人でもその苦しみを和らげることができるところです。もうひとつは、イエスを遥か彼方の目標とすることで、他者の苦しみを和らげようという強い意志を維持できるところです。このふたつが車の両輪となって、キリスト教社会は底知れぬ力強さを持つことができたのではないかと思いました。

名画を紹介する本としてもイエスの生涯を紹介する本としてもとても興味深い内容の本でした。