法楽日記

デジタル散策記&マインド探訪記

峰竜太(著)「“喜平さ"がつくった奇跡の村」

峰竜太(著)「“喜平さ"がつくった奇跡の村」を読みました。

「奇跡の村」とも呼ばれる長野県下條村の元村長・伊藤喜平さんと下條村の物語です。伊藤喜平さんは村長を平成4年(1992年)〜平成28年(2016年)の6期24年間務められ、下條村を「奇跡の村」と呼ばれるところまで育てあげた立役者です。村長になる前は村会議員を通算3期務められ、3期目には村会議長だったそうです。昭和10年(1935年)下條村のお生まれで、村会議員になる前は村内で事業を手がけていたそうです。

この本では、下條村がいかにして「奇跡の村」に変わっていったのか、その経緯が紹介されています。下條村出身で「下條村重要無形文化村長」の肩書を持つ峰竜太さんが、親戚(義姉のお兄様)で元村長の伊藤喜平さんと、小中学校の同級生で副村長の宮島俊明さんから聞いたお話を中心に、とても読みやすい語り口で郷土愛たっぷりに書かれています。

伊藤喜平さんは村長に就任するとすぐ、村役場職員の意識改革に取り組んだそうです。そのために職員全員を交代で1週間ずつ民間研修に出して、店頭での物品販売を体験してもらったそうです。そして職員の新規採用をしばらく停止して職員数が減るにまかせて、少数精鋭(=少人数にすれば自然に精鋭に育つ!)の体制を作っていったそうです。

また、支出削減にも取り組んだそうです。中でも有名なのが資材支給事業です。小規模工事については、村役場は資材を供給するだけで工事費用は出さず、工事作業は住民たちで行うことにしたそうです。これにより小規模工事が安く早く手軽に実施されるようになったそうです。この事業については下記の産業経済省次官・若手プロジェクト「不安な個人、立ちすくむ国家」の報告書(p.61)でも紹介されています。

様々な支出削減で浮いた予算を元に、若夫婦向けの集合住宅を建てたり、子育て支援制度を充実させていったりしたそうです。下條村は隣接する飯田市の通勤圏内なので若夫婦が移り住むようになり、公約の「子どもの声が響く村づくり」を実現できたそうです。政府の補助金は縛りが多いので、目的に合致するものだけを選んで利用したそうです。

そういった様々な取り組みの結果、財政の健全性は全国でトップクラスとなり、子どもの人口比率も高くなり、全国から「奇跡の村」と呼ばれるようになっていったそうです。

この本は、故郷・下條村が大好きな著者による愛情あふれる故郷自慢の本でもあります。地域の文化活動として、下條歌舞伎地域戦隊カッセイカマンが紹介されていました。

この本を読んで、下條村はとても魅力的な村だなと思いました。


以下、参考記事です。


下記は伊藤喜平さんの講演映像です。平成25年(2013年)11月9日に神奈川県葉山町で開催された「第9回 21世紀かながわ円卓会議」の初日に講演された際の映像です。

  • 村民とともに歩む地域づくり〜子ども・若者が元気な村に〜 (伊藤喜平, 21世紀かながわ円卓会議, 2013-11-09)